〜 前期型 〜
1993年8月に、GT-Rを除くスカイラインがR33型にフルモデルチェンジした。それに遅れること1年5ヶ月、待望のR33GT-R(型式:BCNR33)が発売された。
一見してまず驚くのがボディサイズである。R32GT-Rと比べ、全長130mm、ホイールベースでは105mm延長され、車重はR32GT-Rの最終型より30kg増えた。
大型化、重量増による批判は確かにあったが、大幅なボディ補強、サスペンションの見直し、エンジンのリファイン、ブレーキの強化などを行ない、基本性能のポテンシャルはR32GT-Rを明らかに上回り、GT-Rの名に恥じない性能を持っている。
ターボの過給圧は、R32GT-Rのそれが約0.75kg/cm2であったのに対し、約0.84kg/cm2まで高めることで、エンジンの最大トルクを1.5kgm上げ、点火時期、混合比、燃料噴射量などの制御を、8ビットから16ビットのコンピュータに変更したことで、より細かなセッティングを可能とした。
軽量素材を各所に配置したり、バッテリーをトランクルームに持ってくるなどし、前後重量配分をR32GT-Rより1〜2%改善、ヨー慣性モーメントを低減させた。そして、ブレンボ製のブレーキが標準装備となり、より速く、より重くなったGT-Rを、より止めることが出来るようになった。
〜 Vスペック 〜
標準車と同時期に発売されたVスペックは、標準車より50万5000円高い529万円で売り出された。
主な変更点は、後輪のデフに後輪左右のトルク配分を可変できる電子制御のアクティブLSDを採用し、前後輪トルク配分およびABSも含めて総合的に制御する ATTESA E-TS PRO を搭載した。これにより、4WDの特性を生かしつつアンダーステアを減少させることに成功した。
これらの装備追加により標準車と比べ、10kgの重量増、最低地上高が10mm低い135mmとなった。
〔主な変更点〕
・アクティブLSD の採用
・ATTESA E-TS PRO の採用
〜 Vスペック N1 〜
VスペックをベースにN1レース仕様として発売されたモデル。
R32GT-Rのレースで培ったノウハウをもとに、メタルタービン、専用ピストン、空冷オイルクーラー、専用ウォーターポンプを採用。さらにコンロッドベアリングの材質や、カムプロフィールも変更している。
冷却性能と空力特性向上のため、専用のバンパーとスポイラーを装備した。
〔主な変更点〕
・セラミックタービンをメタルタービンに変更
・N1専用ピストン
・N1専用ウォーターポンプ
・空冷オイルクーラー
・コンロッドベアリングの材質を変更
・カムプロフィールを変更
・N1専用バンパー
・N1専用スポイラー
〜 中期型 〜
R33GT-Rが発売されてから約1年後、初めのマイナーチェンジが行なわれた。
変更はインテリア、エクステリアパーツの若干のデザイン変更および、安全面に対する変更としてデュアルSRSエアバッグを標準装備とした。ただし、Vスペック N1 モデルには運転席のみのエアバッグとなる。
インテリアで好評だった変更が、ステアリングホイールのデザイン変更である。同じ4本スポークではあるが、当初のボテッとしたイメージのステアリングから、スマートでスポーティなデザインとなった。また、センタークラスターの形状と材質も変更されたが、こちらは材質が変わったことで質感が落ちたという声が多くあった。
外見での変更はリヤフィニッシャーのデザインだけである。デザインも大きな変更が無く、もともとが小さな部品のため、一見しただけでマイナーチェンジ前後を見極めるのは非常に難しい。ボディカラーとして、スーパークリアレッドU(AR1)、ソニックシルバーメタリック(KR4)の2色が追加された。
BCNR33を前期/後期で分けた場合、このモデルはまだ前期型となる。
〔主な変更点〕
・デュアルSRSエアバッグを標準装備
・ステアリングホイールのデザイン変更
・センタークラスターのデザイン、材質の変更
・リヤフィニッシャーのデザイン変更
・ボディカラーにスーパークリアレッドU(AR1)、ソニックシルバーメタリック(KR4)を追加
〜 LMリミテッド 〜
1996年6月15日〜16日にかけて開催された 『ル・マン24時間レース』 への参戦を記念して発売されたモデルである。ちなみにGT-Rでのル・マン24時間レースへの参戦は、この年で2年目となる。
ボディは、カルソニックスカイラインを思わせる専用色のチャンピョンブルーで塗装されている。それ以外にも、角度調整機能付きカーボンセンターリヤスポイラー、エアインテークを2つ設けたフロントバンパー、フードトップモールも装備し、スポーティーさが増した。
同年の7月末までと、約2ヶ月という短期間で限定発売された。
〔主な変更点〕
・ボディカラーは専用色のチャンピョンブルー
・角度調整機能付きカーボンセンターリヤスポイラー
・エアインテーク付きフロントバンパー
・フードトップモール
〜 Vスペック LMリミテッド 〜
Vスペックをベースとした LMリミテッド仕様 であり、標準車をベースにした LMリミテッド との価格差は、通常の標準車とVスペックの価格差と同じ50万5千円である。
通常のVスペックと同様、ATTESA E-TS PRO などを搭載している。
〜 後期型 〜
R33GT-Rの中で、本格的な見直しが行われたのがこのマイナーチェンジである。
まず外見上の変更点としては、N1仕様と同様2個のエアインテークダクトを設けたフロントバンパーを採用した。このフロントバンパーは、左ターンシグナルの奥に、オイルクーラー冷却用のダクトを設け、さらにバンパー自体を下に20mm大きくすることにより、ラジエーターやインタクーラーの冷却性能を大幅に上げることができた。また、ブレーキ冷却用ダクトの開口面積も増大された。ただ、下に拡張したことにより日常生活における縁石への接触を懸念するユーザーを考慮し、従来型のフロントバンパーもオプションで用意した。
そして、人気が高かったアイテムとしては、プロジェクタータイプのキセノンヘッドライトである。低電力で多光量、視認性が高いキセノンヘッドライトは高価なパーツであったが、これを流用する前期型、中期型のユーザーも多くいた。さらにライト類の変更として、右側のバックランプをリヤフォグランプへと変更されている。
駆動系の変更として、リヤサスペンションメンバーの取り付け部分に補強 (フロアステー) が加わり、剛性アップされている。また、ABSアクチュエーターの小型化により軽量化、さらに制御系統もチューニングされたことで旋回制動時の安定感も高くなった。
インテリアにも変更が加えられ、ドアの内張りやシートにおいて、赤を基調としたカラーリングが採用された。またフロントガラスには、撥水性能を高めた撥水ガラスを採用した。
これだけの大きな変更にもかかわらず、車両価格は中期型の6万円高というコストパフォーマンスも非常に高かった。
〔主な変更点〕
・エアインテーク付きフロントバンパー
・フロントスポイラーの形状変更
・プロジェクター型キセノンヘッドランプ
・右側のバックランプをリヤフォグランプへ変更
・リヤサスペンションメンバー部の補強
・ABSアクチュエーターの小型化
・ABS制御系統のチューニング
・ドア内張り、シートに対し赤を基調としたカラーリングの採用
・フロントガラスにロングライフ撥水ガラスを採用
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